2024年11月8日、日本のクレジットカード業界が再編の兆しを見せています。背景には、長年問題視されてきた「割高な手数料」に対する圧力と、それに応じた業界の動きがあります。今回は、手数料引き下げの流れと、それが引き起こす可能性のある変化について探ります。
クレジットカードの手数料が「割高」な理由
日本のクレジットカード手数料は、欧米と比べて高いと言われており、特に飲食業界などでは、5%を超える手数料が一般的です。経済産業省の調査によると、日本のクレジットカード手数料は3%以上が平均であり、欧州の1%台や米国の2%台と比較してもかなり割高です。このため、多くの飲食店がクレジットカード決済を導入しないか、利用を制限することになっています。
手数料引き下げの動きとその影響
しかし、最近では三井住友カードをはじめ、カード会社や決済代行業者が手数料引き下げに踏み切る動きが顕著です。三井住友カードは、2024年11月から中小企業や個人事業主を対象に、VISAやマスターカードの加盟店手数料を1.98%に引き下げると発表しました。この動きに追随するように、SquareやAirペイといった決済代行業者も手数料を引き下げ、特に中小事業者向けのサービスが充実してきています。
手数料引き下げは、加盟店にとっては大きなメリットとなります。経営者にとって、クレジットカード決済を導入しやすくなり、消費者にとっても利用可能な店舗が増えることが期待されます。政府としても、キャッシュレス化を加速させるために、この動きを歓迎していると言えるでしょう。
ユーザーにとっての「改悪」の懸念
ただし、手数料引き下げの影響がすべてポジティブなものばかりではありません。専門家は、手数料引き下げがカード会社にとっての収益減少を招き、結果としてサービスの改悪に繋がる可能性を指摘しています。例えば、カードの特典やポイント還元率が低下するなど、ユーザーへのサービス提供が減少することが懸念されています。つまり、業界全体がコスト削減に向かう中で、消費者が享受できる利益が減ることも十分に考えられるのです。
少額決済市場を巡る競争の激化
日本国内でのキャッシュレス決済のシェアを巡る競争も過熱しています。かつては電子マネーが優位を占めていましたが、QRコード決済の台頭により、そのシェアは大きく変化しています。2023年には、コード決済の決済額が10.9兆円に達し、電子マネーの6.4兆円を大きく上回りました。しかし、この少額決済市場において、今後はクレジットカードのタッチ決済が強力なライバルとなり、コード決済の勢いを抑える可能性も出てきています。
クレジットカードのタッチ決済は、少額決済を行うユーザーにとって、QRコード決済に匹敵する便利さを提供しています。この動きがさらに広がれば、QRコード決済が「三日天下」で終わる可能性もあります。
業界再編の行方と未来予測
クレジットカード業界の再編が進む中で、今後どの決済手段が主流となるのか、また手数料引き下げがもたらす影響については注視が必要です。手数料の引き下げが中小事業者や消費者にとっては歓迎される一方、カード会社のサービス改悪や競争激化がどのような形で現れるのか、今後の業界の動きには注目が集まります。
キャッシュレス社会への移行が進む中で、ユーザーにとっても、事業者にとっても、どの決済手段が最も便利でお得なのかを見極める時代が訪れるでしょう。